7.卒業〜5cmの向こう側〜

★少し静かになった学校で・・・

私の勤める高校では、例年、卒業を控えた3年生は1月末ごろの学年末テストが終わると、あとは3月1日の卒業式と前日の予行練習(2004年の場合は2/27)まで「自由登校」となるのがふつうだ。

進路が決まった生徒は進学・就職のための部屋探しや自動車学校通いで忙しいし、決まっていない生徒はぎりぎりまで受験や就職活動が続く。たまに学校にでてきているのはHRの文集作りに励んでいる生徒や最後の最後で「赤点」をとってしまった生徒、することがなくて部活に顔を出している生徒などに限られる。


校内は3年生がいない分、かなり静かになる。よく考えたら、物理的に言っても1/3(約200人)の生徒がいなくなるのだから、それも道理だ。3年生の担任はほっと一息つきながらも、やはり一抹の寂しさも感じているに違いない。
そういえば、昔ユーミンの歌で『最後の春休み』というのがあった。卒業式を終えた後の最後の春休み。教室に忘れ物を取りに行く途中、人気のない長い廊下を歩いていたら泣きたくなった。ずっとこの時間、この場所にうずくまっていたい・・・。たしかそんな内容だったと記憶している(またもや年がバレますね)が、そんな風に感じている生徒もいるのだろう。いや、いてほしいなあ。
 そんなことを考えながら学年末テストの採点をしていると、答案の最後、私がいつも設けている「授業の感想など好きなことを一言どうぞ」という5cmほどの幅の欄に、今年も様々な書き込みがあった。


「もっとここの生徒でいたかった・・・」   (いい思い出を作れて良かったね)
「3年間あっという間だった。もっと勉強しとけばよかった!」   (皆そう言うんです)
「自分では絶対知ろうとしないことがわかって、とてもためになりました」  (うれしい!)
「これからも新聞を読もうと思います」   (「新聞ノート」をやった甲斐がありました)
「先生はイラクに行かないんですか〜?」   (ええっと、行きたいのはヤマヤマだけど・・・)
「条約と憲法はどちらが優先なんですか?」  (むむっ、鋭い。どう答えようかな)
「黒板の字がいつも右下がりでした。もう少しきれいに書いてよ」  (すいませんっ!)
「(授業は)ねむい、つまらない」   (すいません。でも君初めからずっと寝てたよね・・・)



5cmの隙間から、生徒のたくさんの思いが垣間見える。だから私は自分で作ったこの欄がとても好きだ。全部書き取って本にしてみたらさぞおもしろいものができるだろう、と時々本気で考えたりもする。
だが、卒業生の中には、学校にあまりいい思い出を残せないまま「一刻も早く出て行きたい」という生徒もきっといるのだろう。教師は、言葉に出さない(出せない)そんな生徒の思いまで感じ取ってしまう。だからこそ、切ない。
私たち高校教師は、一人の生徒には(原則として)たった3年間しか関わることができない。その短い時間でいったい何をしてあげられただろう?生徒には何が残っただろう?
3年生がいなくなった長い廊下で、今年もまたそんな思いにとらわれた。
教師って、結局いつも取り残されていくものだなあ・・・(しみじみ)。