【春闘特集1 春闘の歴史】
1、春闘とは
春が近づくと、「春闘」という言葉をニュースなどでよく聞きます。この「春闘」とは、@春の時期に、A労働組合がいっせいに、B賃上げや労働条件の改善を求めて経営側と交渉することを示しています。

この「春闘」が生まれたのは、日本の労働組合の組織形態と関係があります。欧米では、「産業別(労働)組合」が中心となり、労働条件改善の闘争を繰り広げて、大きな成果を得てきました。それに対して、日本では、「企業別」に労働組合が組織されているため、経営側との力関係が弱く、十分な賃上げ要求ができないという弱みがありました。そこで、同じ時期に同一産業の主要企業で交渉することで、「企業別組合」の弱点を補おうとしたのが、1955年に始まった「春闘」です。
「春闘」は、当時の主要産業であった、炭鉱・私鉄・電産・金属・化学・電機産業等を前面に出し、そこで得られた成果を社会的に波及させるという意味があります。実際に、「春闘」が始まってからは、「他の企業の賃金水準を自社の賃金水準を決めるときに参考にする」という経営者が増え、日本の賃金水準上昇に大きな影響を与えました。
2、春闘の高揚
「春闘」による賃上げは、1960年の日米安保条約改定阻止の闘争、同年の三井三池1200名指名解雇反対闘争(1年9月に及ぶ)と結びつき、この年、公務員労働者への12.4%アップの人事院勧告、翌61年春闘での12.3%賃上げなどの成果を得ました。また、60年代後半からは、総評・春闘共闘が組織した、全国一律最低賃金制度獲得の大衆闘争にも発展し、1970年には地域別最低賃金を導入させる力にもなりました。
70年代に入ると、「春闘」はさらに発展していきます。70年には高度成長政策の矛盾が、インフレ、公害、環境破壊などにあらわれ、それとともに、「春闘」は単なる賃金闘争にととまらず、革新自治体の誕生とともに国に対する制度的諸課題が結合して闘われるようになりました。70年「春闘」からは、「生活闘争」春闘として国民の切実な要求を掲げるようになり、とりわけ1974年には「インフレ阻止」を掲げてたたかい、「32.9%」という高率の賃上げという成果を得ました。
3、資本家の反撃、労組の変容
このような「春闘」での成果に対し、財界は危機感をつのらせ、反撃を始めます。1974年に当時の日経連は、「大幅賃上げ行方研究委員会」を組織し、賃上げは生産性上昇率以下に抑えようとしてきました。そして、賃上げ水準を1975年は15%以下、76年以降は一桁とする「賃上げガイドライン」を発表、政府も一体となって強力な賃金抑制に乗り出しました。その結果、75年春闘では「13%」(前年が32.9%であるのに!!)という財界のガイドラインをも下回る結果になりました。
また、このような経営側の動きとともに、労働組合側でも変化が出てきました。経営側の意見に呼応して、賃上げ自粛を打ち出す労組の存在が、それです。
このような、資本家の攻撃と賃上げ自粛を打ち出す労働組合側の動きにより、70年代後半以降、春闘は冬の時代を迎えます。
4、労働組合の再編、全教の誕生
春闘が低迷する中で、1970年代後半から、日本の労働組合はナショナルセンター(労働者組合の中央組織)をどうするか、という問題で揺れることになります。その流れは、一つは現在の連合(日本労働組合総連合会)へ、もう一つは現在の全労連(全日本労働組合総連合)へと繋がりました。
当時の日教組、日高教などの教職員組合は、各都道府県で、このどちらの流れに合流するかで議論し、その中で、たたかう労働組合・全労連に結集する方針を決めた各県教組や高教組、新たに組織を立ち上げて合流した教職員組合が1992年に結成したのが、全教(全日本教職員組合)です。
全労連に結集した労働組合は、春闘の冬の時代の中、たたかう労働組合として、各地で果敢に闘っています。そして、連合の低額回答を上まわる賃金の引上げや看護婦さんを増やすための看護婦確保法の制定など数々の成果をかちとっています。また、国民的な要求実現のための共同や世界の労働者との連帯も大きく広げています。
5、春闘の意義
春闘は、主に民間企業の労働者が賃上げ、労働条件の改善を求めてたたかう時期ですが、決して民間企業の話にとどまりません。
バブル最盛期の頃、公務員にならずに、多くの人が銀行など民間企業に就職しました。その時、「民間の賃金は高い」と言われました。
今、不景気の時期。「公務員の賃金が高い」と言われます。
本当は、それぞれ、「公務員の賃金が安い」、「民間の賃金が安い」と言うべきではないでしょうか。「安いから上げる」という方向に動くのではなく、常に「高いから下げる」という世論が作られています。
「春闘での賃上げ」→「人事院の公務員給与勧告」→「各県人事委員会の給与の勧告」→「翌年の春闘での賃上げ」
というサイクルで、現在の賃金は決定されています。
それだけに、「春闘は民間のたたかい」、「人勧は公務員のたたかい」というように区別するのではなく、民間と公務とがともに、賃上げ、労働時間短縮、労働条件改善のたたかいをしていく必要があります。