【学習】「教育改革」とWTO(世界貿易機関)・IMF(国際通貨基金)

☆世界の貿易の3分の2は、超国家的企業によるもの
最近、規制緩和だの、構造改革だの、市場原理だのと、やかましく騒がれ、職場でも、時々、訳知り顔に、「競争原理」だの「自由競争」だの、と言っている人もあるのではないでしょうか?
また、「教育にも自由競争が必要だ」と、各地で「教育改革」が進んでいます。
その源泉のひとつが、実は、「WTO(世界貿易機関)」・「IMF(国際通貨基金)」にあると言ったら、驚かれるでしょうか?

日本だけを見ていると、先の「規制緩和」とか「自由競争」とかは、「小泉改革VS抵抗勢力」だと宣伝されていますが、いわゆる改革派の背後には、超国家的企業が控えていることを忘れてはなりません。

今、世界の貿易は、3分の1が超国家的企業とその子会社の取引(アメリカIBMと日本IBMなど)、3分の1が超国家的企業同士の取引(IBMとトヨタなど)、残り3分の1が普通の意味で使う貿易となっているそうです。
(ちなみに、スーザン・ジョージという人は、「多国籍企業」という言葉を使いません。というのも、「多国籍」に見えても、人事・財務など主要部門までさかのぼると、ほとんど、単一の国籍になるからです。例・IBMなどは、中枢部門はアメリカ人による。)

そういう中で、超国家的企業は、当然、自分が貿易をしやすいように各国に働きかけます。その際に、利用するのが、「WTO」や「IMF」なのです。


☆「WTO」とは?
まず、「WTO」ですが、これは実は国連機関ではありません。ですので、人権宣言やら、ILO(国際労働機関)条約、児童憲章やらの国連規約に縛られません。目的はただひとつ、「貿易の障壁を取り除く」ことです。「安い商品が勝つように、貿易障壁を取り除く」のが目的です。ですので、関税をさげ貿易障壁を取り除き、効率の悪い公務サービスは民営化させるように働きかけます。しかも、加入国には罰則付きで要求します。

 一見、「自由競争で安い商品が国際市場で生き残る」と思うかも知れませんが、その商品・サービスが作られる際、ひどい労働条件で労働者を働かそうが(アジアでは児童を14時間働かし、15歳ごろには仕事の過酷さで失明することも)、環境を破壊して作られようが、何でも「安ければ良い」のです。

WTOは、「貿易の障害を取り除けば、途上国も食料や原料を輸出できて良いじゃないか」と思うかもしれませんが、先進国はそんなに甘くありません。自国の農家に莫大な補助金を出して安価にした上で、自由競争を仕掛けます。当然、「安くていい商品」が流れ込むので、途上国の農業は敗退し、国内の自給さえおぼつかなくなるほど、ぼろぼろにされます。

また、「知的所有権を守ること」を声高に主張します。特に、生物の分野では、遺伝子などの発見に特許を認めるように訴えます。もちろん、現在、多くの生物がいるのは、途上国の熱帯雨林などです。超国家的企業が、一度、特許をとると最後、途上国は自国の植物であってもその遺伝子の利用に対し、特許料を払う必要があります。もちろん、超国家的企業が新しい遺伝子を発見したからといって、その国に「お礼」は1文たりとも払いません。

医薬品も同じです。開発して特許をとったら、そのコピー製品を作ることは認めません。たとえ、その安いコピー商品を使えば多くのエイズ患者が救われるとしても、正規の商品を買うことを求めます。もちろん、高くて普通の途上国の人は買えません。

スーザン・ジョージは言っています。「世界貿易にルールは必要だ。しかし、それはWTOのルールではない」
このようなWTOのことを、国連も正式なレポートの中で、「超国家的企業の影響を強く受けている」と残しています。


☆「IMF」とは?
一方、「IMF」も、国際金融の正常化を図っているように見えますが、アジアの通貨危機を引き起こしたり、途上国の経済の足を引っ張っています

途上国は多く、対外債務に苦しんでいます。その返済や利払いの期限が迫ると、途上国はIMFや世界銀行詣でをします。債務の利払いの延期や債務の削減、追加融資を求めて訴えるのです。

その際、IMFは、IMFが提示するプログラムの実行を約束する契約書へのサインを求めます。それにサインすると、利払いの延期や追加融資などを許可します。そのプログラムでは、利益の出ている公務サービスの民営化を要求します。利益の出る公務サービスを民営化され、利益の上がらない部分を残された途上国は、ますます貧困へのサイクルを進みます。

実例で見ると、アフリカのある国は、IMFのプログラムに従い、携帯電話の電波域を超国家的企業に売却しました。その費用で学校を建てようとしたのです。しかし、その費用は先に借款の返済にまわされました。IMFにとっては、その国の国民が教育を受け、文化が向上することよりも、自分の債権のとりたてが最優先事業なのです。

また、別のアフリカある国は、家畜の病気を予防する部局が民営化され、家畜用のワクチンの輸入が自由になりました。すると、これまで輸入の際、国が検査をしていたのですがその検査がなくなり、期限切れのものを輸入し、その使用により家畜が死んだり、ワクチンの値段が上がって一般の遊牧民には買えなくなったりしています。そのために、ワクチン接種済みの証明書を持たない普通の遊牧民は、家畜の肉を安く買い叩かれるなど生活するうえで大きな障害が出てきています。


☆今後の展望

日本ではあまり注目されていませんが、世界の多くの国では、WTOや、IMF・世界銀行の無条件な弱肉強食の自由競争の動きに対して猛烈な反対運動が起こっています。
WTOの会議のたびに集まる、抗議のの大群衆。インターネットを通じて、WTOの動きをチェックし、抗議運動を呼びかける団体。世界経済フォーラムに対抗して、世界社会フォーラムに結集する人々。

日本でも、農家を中心に多くの人が、WTOに代表される自由貿易体制に対する抗議運動を進めています。

一方、WTOが要求する公務サービスの民営化要求の中には、電話、鉄道、郵便などと並んで、社会保障、教育も入っています。
今、小泉首相は、「郵政民営化」を必死に唱えていますが(国民の多数は、年金とか社会保障を何とかして欲しいのに)、次にWTOが日本に望むのは、社会保障、教育の民営化かも知れません。

すでに、構造改革特区による株式会社の学校運営や、学校の公設民営化など、その流れが少しずつ作られています。

それだけに、憲法に定められた国民の教育権と、それに基づく教育基本法に定められた教育の機会均等を守り、国による教育条件整備をすすめていく運動が大切です。憲法、教育基本法を守り生かす運動を高めることが必要です。また、同時に世界に目を向け、「WTO」に反対している世界中の人々に動きに注視し、連帯していくことも大切です。

*参考文献
「WTO 徹底批判」(スーザン・ジョージ)、「私物化される世界」(ジャン・ジグレール )