【2000.9.12】全国教室温度調査・中間まとめ
全教青年部では、2000年度に「全国教室温度調査」を行いました。下記はその中間まとめですが、この調査は新聞・TVなどのマスコミでも取り上げられるなど大きな反響を呼びました。
注・【別表(1)】などの表記がありますが、掲載はされていません。ご了承ください。
1、はじめに
2000年9月12日
全日本教職員組合青年部
現在、多くの学校では一部の施設をのぞきエアコン・クーラーなど空調設備が設置されていない。そのため、夏の暑い時期や冬の寒い時期の学習・教育活動は困難を強いられ、「暑い日は授業にならない」「パソコンを入れるならエアコンを入れて欲しい」など、教室等への空調設備の設置は子ども・教職員にとって切実な要求となっている。しかし、全教青年部が今年3月おこなった文部省交渉では、エアコンの教室等への設置は「設置者の判断」ということがことさら強調され、文部省としての責任ある対応について全く述べようとしていない。
全教青年部は、子ども・教職員の要求にこたえ、より子どもたちが学びやすく、教職員が働きやすい環境を実現する観点から、今年4月におこなわれた全教青年部総会で教室等の室温についての全国調査を決定し実施した。現在、第2回目の調査を実施中であるが、文部省をはじめ各関係機関への要請、父母・国民との論議・合意形成をすすめるため、第1回目の調査結果にもとづき中間的なまとめをおこなった。
2、実施状況
全国17県1732カ所(9/5現在)の教室、職員室、保健室、体育館、特別教室などで教室温度調査をおこなった。全教青年部としては調査日時を7月11日14:00に設定したが、ごくいくつかのところで、授業その他の理由で実施日時をずらしておこなっている。全体の実施状況については【別表(1)】を参照。
3、文部省等がしめす基準
文部省等がしめしている基準は、夏期の教室については「最も望ましい」が25〜28℃、「望ましい」が30℃以下である。また、職員室は17℃以上28℃以下、給食調理室は25℃以下である。ただ、教室や給食調理室の基準はあくまで「通知」であり、法的な拘束力をもたない。その妥当性についても、学習・教育環境という点から見て、実態に見合ったものであるかどうか議論の余地があるものである。職員室については、これは労働安全衛生法にもとづくものであり、義務をおこたる管理者に対しては罰則規定をともなうものである。
4、調査結果
(1) 実施日の天候
実施日の天候については、「晴れ」が約46%、「曇り」または「雨」などの日が約54%である。また、7/11の各地の天候の状況は、おおむね東日本は晴れ、西日本は天候が崩れ雨または曇りの地域が多くなっている。したがって、西日本の地域ではふだんと比べ室温が低く、「いつもと比べすごしやすい」との回答が一定数でている。同時に、湿度が高かったため不快感を訴える回答も多かった。また、東日本の地域では、おおむね「いつもと同じ」もしくは「ふだんより暑い」という状況であった。ただ、秋田県については、「ふだんよりまし」という回答が多かった。
(2) 教室の人数
5人未満の場所での実施数が多くなっているが、これは実施日が、午前中授業や他の教室での授業のため、教室に児童・生徒がいない教室が一定数あったためである。また、保健室や職員室、あるいは授業をおこなっていない体育館や特別教室などでも調査しているためである。
(3) エアコン・クーラー・扇風機など空調設備の設置状況
普通教室のほとんどは、クーラー・扇風機などの設置がおこなわれていない。設置されている多くは、保健室や職員室、調理室、障害児学校や特別教室の一部である。また、和歌山県で一部地域に扇風機が設置されている普通教室があるが、これは和歌山県で数度にわたる教室温度調査をもとに交渉を重ね、行政がその設置の必要性を認めた結果、設置されたものである。
(4) 温度および調査実施者の声
場所によって文部省等がしめす基準が異なるが、全体としてのデータは【別表(1)】の通りである。曇りまたは雨などでの実施場所が全体の約54%をしめ、またクーラーなどを使用している場所も含まれているが、28℃をこえるが約78%、30℃をこえるが約45%にのぼる。調査に協力していただいた教職員から寄せられた声は、別途資料の通りである。別途資料の自由筆記欄は、主として温度調査の実施場所の温度・湿度の問題について聞いたものであるが、教室等の実態をはじめ切実な声が数多く寄せられている。
全体として、データの面からも、また教職員から寄せられた声からも、児童・生徒、教職員は、文部省等がしめす「望ましい」環境とは到底いいがたいきびしい状況のなか、がまんを強いられ、学習・教育活動をおこなっている実態が浮き彫りになったといえる。
○ 教室・特別教室について
児童・生徒、また教員が多くの時間を過ごし、学習・教育活動をおこなっている教室・特別教室については、それぞれ【別表(2)】、【別表(3)】の通りである。教室について文部省がしめす「最も望ましい温度」は28℃以下、「望ましい温度」は30℃以下であるが、28℃をこえる教室、特別教室はそれぞれ約86%、85%、30℃をこえるはそれぞれ約51%、56%となっている。
【別表(4)】は「クーラーを使用していない教室および特別教室(7/11)」について集計したもので、28℃をこえるが約88%、30℃をこえるが約54%となっている。これが【別表(5)】の「クーラーを使用していない教室および特別教室(7/11、晴れの地域)」になると、28℃をこえるが約90%、30℃をこえるが約68%になる。とりわけ、全県的に晴れた東京都および埼玉県のデータ【別表(6)】では、28℃をこえるが約98%、30℃をこえるが約76%にものぼる。また、全県的に天気の崩れた和歌山県のデータ【別表(7)】でも、28℃をこえるが約88%、30℃をこえるが約43%となっている。
なお、【別表(8)】は、サンプル数は少ないが「障害児学校の教室(7/11)」について集計したものである。寄せられた回答では、教室について約40%でクーラーが設置されているが、全国的にはすすんでいない。28℃をこえる教室が約65%、30℃をこえるが約51%となっている。
別途資料の自由記述欄では、天候、地域、学校の立地、教室の場所などによって状況は異なるが、夏場(多くは6月から9月下旬にかけて)、教室の温度は30℃をこえ、朝から日差しが差し込む教室では午前中から30℃をこえる、また西日が差し込む教室では夕方になっても30℃をこえている、という記述が多くみられた。状況としては、「暑くて子どもたちも教職員も汗を流しながら授業をしている」「少し動くだけで汗が吹き出る」「タオルが手放せない」「すわっているだけで子どもは汗ばんでいる」「校医から濡れタオルを携帯して授業を受けるよう指導があった」など、教室がまるで「サウナ、蒸し風呂」で、およそ「学習に適した環境、仕事をする環境とはいえない」という声が出されている。こうした状況のなかで、「子どもたちが授業に集中できない」「学習効果が上がらない」「子どもの落ち着きがなくなる」「暑さでイライラしている」「子どもたちがぐったりして寝てしまう」など、教育活動に大きな影響がでている。「小学校低学年の児童の体力では無理」という声も数多くあった。さらに、「吐き気、めまい、気分不良を訴える生徒が続出」「子どもが体のだるさを訴える」「鼻血をだし、とまらなくなる」「アトピーの子など泣きだす子もいる」など、子どもの健康面での影響がでていることも伺える。
また、窓を開けても、「砂ぼこりがひどい」「風で掲示物やプリントが散乱する」「雨が吹き込む」「虫(蚊・ハチなど)や鳩が入ってくる」などの声も多く出された。とりわけ都市部の学校では、「工場からの排気で子どもが頭痛を訴える」「悪臭・異臭(自動車・工場などの排気、トイレの臭いなど)がひどい」「光化学スモッグ発令中は窓を閉めなければならない」「隣家・会社と隣接していて窓を開けにくい」など、「窓を開けたくても開けられない」という切実な声も出されている。
「高い湿度による不快感」など、湿度についての記述も数多く見られた。学習面や健康面以外にも、「湿気で壁にカビが生えている」「子どもの作品や掲示物に影響する」「床や廊下がすべりやすく危険」「楽器が傷む」「弁当持参の日があるが気掛かり」などの声が出されている。そのほかにも、「風通しが悪い」「照り返しや西日が強い」「人数の割に教室が狭い」など、建物の構造などに関する意見も多く出されている。
また、「扇風機があるがさほど効果がない」「クーラーが古いため除湿機能がない、全体に行き渡らない」といった意見もあった。寒冷地では、冬期の寒さについての記述がみられた。予算の関係で十分に採暖できないという声がいくつかあり、こうした状況は軽視できない問題である。
障害児学校では、「体温調節が難しい生徒もいるのでエアコンは必需品」という声が出されている。また、教室に入っていても他の部屋との温度差が激しく、「全教室にエアコンを」という声も出されている。
こうした状況を、「児童に身体的苦痛を与えているのと同じ。児童虐待になるのでは」「(学校に)仕事をしに来ているのか、修業をしにきているのか」と指摘する声が出されている。こうした状況の解決のために文部省・各教育委員会をはじめ関係諸機関が早急な対策をもとめる声が多く、「学校は子どもたち(教職員も含めて)にとって明るく過ごしやすい環境をつくってほしい」という声は教職員の共通の願いといえる。
○ 職員室
事務所衛生基準規則では、事務所(職員室)の温度について17℃以上28℃以下と定めている。回答の寄せられた191校のうち約26%にクーラーが設置され、扇風機なども含むと全体の約69%で対策がおこなわれているが、それでも全体の約54%で28℃をこえている【別表(9)】。
また、自由記述欄では、クーラーが設置されていても「子どもがいる時間にはほとんど入れない」「児童や担任の先生に申し訳ない気持ちになる」「予算が気になってスイッチを入れられない」などの声が寄せられている。クーラー設備のない職員室では、「仕事の能率があがらない」「砂ぼこりが入る」「風で書類が散乱する」「網戸がなく特に夜間は窓を開けられず、仕事に支障をきたす」といった声が出されている。
○ 保健室
保健室については、【別表(10)】の通り。クーラーが設置は全体で約47%にとどまっている。とりわけ、東北や長野などの地域でクーラーの設置がほとんどおこなわれていないが、これらの地域でも「体調不良を訴える生徒を休ませる環境としては適当ではない」「具合の悪い子を寝かせるとさらに悪化してしまう」といった声が出されている。また、寒冷地では冬期の室温について問題を指摘する声もみられた。
○ 体育館
サンプル数は少ないが、体育館については【別表(11)】の通り。
○ 給食室・調理室
サンプル数は少ないが、給食室・調理室については【別表(11)】の通り。文部省のしめす基準では、温度25℃以下が「望ましい」とされるが、すべてのところで25℃をこえている。調査を実施した時間帯は調理をおこなっていないので、「調理中の温度はもっと高くなる」という声があった。職員の健康面の問題とともに、衛生面の問題を指摘する声が多い。
5、おわりに
今回の調査で、全国の学校現場が文部省などがしめす「望ましい」環境とはかけ離れた実態にあることが、一定の裏づけをもって明らかにすることができた。
全教青年部は、児童・生徒の学習条件、教職員の労働条件の向上のため、この資料をもとに、@文部省および関係諸機関に対し、教室等の温度・湿度の調査、児童・生徒および教職員からの聞き取りをおこなうなどただちに実態を明らかにさせ、早急な対策をもとめていく(具体的な要請項目などについては、現在おこなっている第2回の教室温度調査の結果などもふまえて設定し、文部省交渉などの場で実現をもとめていく)、A国民世論に率直に訴え、父母・国民との論議をすすめ、広範な人々との運動をつくるなど、引き続きとりくみを強め、要求実現に向け奮闘する決意である。